トランス脂肪酸とは

トランス脂肪酸とは、不飽和脂肪酸の一つで、天然の不飽和脂肪酸のほとんどが持っている脂肪酸です。具体的には、炭素間の二重結合のまわりの構造が、水素原子が炭素間の二重結合をはさんでそれぞれ反対側についているものを指します。

なぜトランス脂肪酸はできるのか

常温で液体の植物油や魚油から、半固体や固体の油脂を製造する加工技術の一つに「水素添加」という方法があります。その際、水素を添加することで不飽和脂肪酸の二重結合の数が減り、飽和脂肪酸の割合が増えます。これにより、トランス脂肪酸が生成する場合があります。水素添加によって製造される加工品はマーガリンやファットスプレッド、ショートニング、それらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子、揚げ物など、わたしたちにとって非常に身近なものです。他にも、植物や魚からとった油を精製する際に、好ましくない臭いを取り除くために高温で処理を行います。この際、トランス脂肪酸ができるため、サラダ油など精製した植物油にも微量のトランス脂肪酸が含まれているといわれています。

トランス脂肪酸の身体への影響

脂質は三大栄養素の一つであり、摂取量が少なすぎると健康リスクを高めます。その一方で、脂質はエネルギー量が多く、摂取過多の場合、肥満などによる生活習慣病のリスクを高めます。トランス脂肪酸については、食品からとる必要がないと考えられていることもあり、現代の食生活ではとりわけ摂取過多を避けられません。トランス脂肪酸の摂取量が多いと、血液中の悪玉コレステロールが増え、善玉コレステロールが減るため、心臓病のリスクが高まるとも言われています。

日本や世界的なトランス脂肪酸の見方

トランス脂肪酸は1日の摂取カロリーの1%以内、2g程度に収めるといいと言われています。2005~2008年に農林水産省が実施した調査研究によると、日本人が食品から摂取しているトランス脂肪酸の1人1日当たりの平均的な量は、0.92~0.96gであると推定し、これは平均総エネルギー摂取量の0.44~0.47%に相当します。また、食品安全委員会は2012年3月に、食品に含まれるトランス脂肪酸の健康影響評価で、日本人のトランス脂肪酸の平均的な摂取量を平均総エネルギー摂取量の約0.3%と推定しました。このことから、日本人の大多数のトランス脂肪酸摂取量はエネルギー比1%未満であり、健康への影響が考えられるレベルを下回っているとし、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられると公表しています。そのような状況ではありますが、マクドナルドやセブンイレブン、ミスタードーナツ。meijiなどの大手企業は提供している食品のトランス脂肪酸含有量を減らす工夫を行っています。しかし、デンマークやカナダ、台湾、アメリカなどでは、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸などの加工食品中の含有量の表示義務や、部分水素添加油脂の食品の使用規制、食用油脂中のトランス脂肪酸濃度の上限値を設定するなど対策を打っています。また、WHO(世界保健機関)は2003年に、トランス脂肪酸は心臓疾患のリスクの増加に関連があると報告しており、2023年までにトランス脂肪酸を根絶させることを呼び掛けています。